日 時2024年8月24日(土)
テーマ講演会:第1部「ユネスコ世界遺産の光と影」第2部「世界遺産の継承と持続可能な世界」
場 所札幌パークホテル
参加者116名
日 時2024年8月24日(土)
テーマコーアクションパーティー(レセプションとして開催)
場 所札幌パークホテル
参加者90名

報告

8月24日、札幌パークホテルにてユネスコ世界文化遺産の講演会と、コーアクションパーティーが行われました。
日本ユネスコ協会連盟の鈴木佑司理事長による講演会では、世界遺産登録の現状やプロセスをお伺いでき、大変興味深いものでした。
講演後の「対話」のパートでは、札幌市内の高校生お二人からの質問に、
鈴木理事長と、北海道大学観光学高等研究センターの西山教授が答える形式。
高校生の問いに対し、「私たちは非力だけれど無力ではない」という鈴木先生の答えが印象的でした。
一人一人の心の中に平和の砦を作ると言うユネスコの精神そのものだと思いました。
コーアクションパーティーでは美味しいお食事とお楽しみ抽選会(ハズレ無し)で大いに盛り上がりました。

世界遺産の意義〜持続可能な世界に向けて

日本ユネスコ協会連盟の鈴木佑司理事長による講演会では、世界遺産登録の現状やプロセスをお伺いでき、大変興味深いものでした。
講演後の「対話」のパートでは、札幌市内の高校生(横道さん、井田さん)お二人からの質問に、鈴木理事長と、進行役である北海道大学観光学高等研究センターの西山教授が答える形式。
「世界遺産が、その文化の交流が世界平和につながるのは理解できるけれど、なぜ戦争は起きているのか?」という高校生の鋭い質問に対し、「戦争が人を殺し、ものを壊した。それを防ごうと必死になって世界遺産条約を作ろうという運動が起こった。
その精神が大切で、ユネスコがなければもっと悲惨だったに違いない。」「私たちは非力だけれど無力ではない」という鈴木理事長の答えが印象的でした。
一人一人の心の中に平和の砦を築くと言うユネスコの精神そのものだと思いました。

(普及PR副委員長 宍戸奈穂)

「世界遺産の意義?」~ユネスコ世界文化遺産講演会に参加して~

10年ほど前に、世界遺産アカデミー主催の世界遺産検定2級の試験を受けた。
試験会場の東京九段下にあるビルの、広いホールに集まった限定500名の受験者を見わたして驚いた。
なんと、9割が学生らしき若者。
そりゃそうだ、「履歴書に世界遺産検定〇級を追記するためなのだ!」とすぐに気づいたが、私のように単なる興味で受験するオバサンはやっぱりちょっと浮いていた。
試験問題は最初の2割が基礎知識で、今回の講演会でのご説明のごとく、第2次世界大戦後のヨーロッパを中心とする保護の動きから条約誕生への流れ、登録に関わる機関や団体の役割、そして「顕著な普遍的価値」を示す登録基準などからの出題。
さらに具体的な質問へと続くが、総じて「世界遺産の意義」を見わたせる良い問題だったと思う。
世界遺産の意義は?と問われれば、我々ユネスコ人は「目的は人類の平和」と一言で答えられるだろう。
世界遺産活動は、民族文化宗教政治を超え人類共通の普遍的価値を認め合い尊重し、未来の人類につなぐ活動である。
過去幾度か高校生へ「世界遺産の意義」についての出前授業をさせてもらったが、わかりやすく、若い人にこそ届けたいユネスコの理念である。
でも実のところ、条約締結から50年以上が経ち、世界遺産件数は最初の登録から100倍以上に増え続ける一方、遺産保有国の偏りや加盟国政府間の力の影響など(特にアメリカは政権が変わるたびに出たり入ったりしている)を知るにつけ、果たして条約の基盤の先は、人類の平和へとベクトルはまっすぐ向かっているのか?
そんな疑問に対し今回の講演会は、国際政治学の権威でもあり日本平和学会会長でもある鈴木祐司日ユ理事長のお話をお聞きできて大変有意義な機会だった。
鈴木理事長のお話は、率直に問題点を提示くださり、是正すべきことや国際情勢を見極めながら進めなければならない点など、難しいお話ではあったが、大学の講義を聴くようで、とても勉強になり私の漫然としたもやもやを整理して頂けた思いだ。
続く「対話」では高校生2名が登壇、「平和を目指す世界遺産が、戦争により破壊されている現実、世界平和に貢献できているのか?」また「日本が世界に発信できる日本独自の技術とは?」と鈴木理事長と北海道大学観光学の西山徳明教授両名に質問。若々しい率直な視点は、講演会が立体的に動いた気がして楽しめた。
世界遺産は現在1223件の登録件数を有するが、鈴木理事長の提示するところの問題点は山積みだ。
中でも基金の問題は大きい。日本には文化財保護の思想が元々あったので、「世界遺産基金」には2番目に大きなお金を出している国とのことであるが、登録にかかる費用や保全活動を考えると潤沢とは言えないようだ。
前述の世界遺産検定料の一部は「世界遺産基金」に寄付されている。
結構人気があり、現在年間3万人が受験しているそうなので、若者への啓発と合わせて、ひとつの地道な活動と言えそうである。

(寺子屋プロジェクト副代表 中村 康江)